私の周りの人に訊いてみた結果、コノシロの知名度はあまり高くないのかもしれません。
ただし、寿司ネタでおなじみの「コハダ」の名前を出すと、ピンとくる人が少し増えるようです。
ここではコノシロはどんな魚なのか、思い出を交えながら書きつつ、ギターにしてみたいと思います。
コノシロはこんな魚
ニシン目ニシン科のこの魚は、全長25cm程度まで成長します。
いわゆる青魚の一種で、背中は青みがかっており、腹部は銀白色で、とても平たい体形をしています。
背びれの後ろ端が糸状に伸びていることと、体の上部にゴマのような小さな斑点があるのも特徴です。
ニシン科の魚ですが、外海を回遊するようなことはなく、浅い内湾や汽水域に群れをなして生息しています。
また、出世魚でもあり、シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロと、成長とともに名前が変わります。
お寿司でよく使われるのはコハダで、それよりも高値がつくのはシンコです。
シンコの握りはまさに江戸前を象徴する一貫で、粋なイメージがある魚です。
小骨が多く、成長とともに骨が硬くなるにつれて市場価値が下がってしまう魚でもありますが、実は大きいコノシロは旨味が強く、とても美味しいです。
コノシロの思い出
コノシロは個人的に大好きな魚です。
岩手の海では一度も釣ったことがありませんでしたが、釣りの対象魚としては定番ということもあって、一度は釣ってみたいと思っていた魚でした。
それが、仙台に来てから釣りを始めたところ、サビキ釣りでコハダサイズが大漁だったことがありました。
確か12年くらい前の秋口のことだったと思います。
当時はあまり包丁の技術がなかったため、三枚におろすのは諦め、頭と内臓、鱗だけ落としてから酢漬けと唐揚げにしてみました。
これがなかなか美味しかったのです。
酢に漬けることによって、小骨は完全に気にならなくなり、漬けて2日ほどで中骨も噛み砕けるほどになりました。
また、塩と胡椒だけ振って小麦粉をまぶして揚げると、ビールのお供には最高です。
そんなこともあって、それからは毎週末に釣りに出かけ、ほんの小一時間釣り糸を垂らして大量のコハダを釣って帰る生活をしばらく続けました。
それからしばらく経って、少し暖かくなってから、仙台駅前の朝市で大きなコノシロが売られているのを見ました。
驚いたのは、その安さです。
20cmを少し超えたくらいのサイズものが、5~6匹が詰められて200円で売られています。
迷うことなく2パック購入しました。
この頃には3枚下ろしにも慣れていたので、3枚にしたものを酢漬けにし、頭と内臓、鱗だけ取ったものは、表面に細かく切れ目を入れてから塩焼きにしてみました。
小骨が多いことは知っていたので、食べやすくするために切れ目を入れたのです。
完成した酢漬けと塩焼きの味には驚かされました。
まず、酢漬けはいつも食べているコハダよりもコクが強く感じられました。
邪道かもしれないと思いながらも、表面を軽く炙ったところ、すぐに脂がしたたり落ちました。
塩焼きは表面が油で揚げたようにカリカリになっていて、一口かじると幸せな気持ちになれます。
他にも細かく切った刺身を作って生姜醤油で食べたり、酢締めを利用してちらし寿司を作ったり、様々な調理法で楽しむことができました。
値段が安い理由はなんとなくわかります。
小骨が多いことに加えて、少しだけ泥っぽいというか、野趣が感じられるところが万人向けではないのかもしれないと思います。
しかし、細かく骨切りをすれば、小骨はあまり気になりません。
また、泥っぽさはゴマの風味を加えることでほとんど気にならなくなるようです。
そのため、細かく切った刺身に煎りゴマを加えたり、フライパンにごま油を強いてから焼き物にしたりすると、匂いも気にならなくなり、風味も増します。
また、前述の通り、コノシロといえば寿司ネタのイメージが強いです。
私は高校生の頃からコハダの寿司が大好きになり、回転寿司でコハダがあれば必ず食べておりました。
当時からなぜ好きなのかを分析していた訳ではありませんが、魚らしい旨味があるところや味がくどすぎないところ、酢で締めているためさっぱりと食べられるところに魅力を感じていたのだと思います。
また、酢に漬けるひと手間で美味しくなるところと、酢飯と合わせたときに一番の旨さを発揮するところも好きな理由の一つです。
いろんな食べ方ができるけれど、寿司にしたときにポテンシャルを一番発揮できるというのは、この上ない個性だと思っており、江戸前寿司において粋な魚だとされている理由にも納得できます。
一度くらい、本物のコハダの寿司を食べてみたいと思い、塩釜にある寿司の名店に足を運び、大将に握っていただいたことがあります。
「コハダはありますか?」と尋ねたところ「シンコならあるよ」という回答があり、図らずも粋なシンコの寿司を食べる機会に巡り合いました。
大将が目の前で丁寧に握ったシンコの寿司は、1貫に5枚の身がつけられているものでした。
このような寿司を見たことがなかったため、まずはその姿に驚きました。
途端に神妙な気持ちになって、少し冷静になってから口に運ぶと、とても柔らかな身は舌先で簡単にほどけ、青魚の旨味が一瞬にして優しく広がったと思ったら、それは春先の明け方に見る夢のように、儚げにふわりと消えていき、余韻がいつまでも残りました。
ここまで構えた状態で寿司を食べたことがなかったということもありますが、それまでに寿司を食べてこんな気持ちになったことはありませんでした。
会計のときに値段を見て驚きましたが、1貫800円というその価格設定は決して高いものではないと、あとで少し調べて知ったときに2度驚くことになりました。
すごく手間がかかっていることも含め、高価になるのは納得の味ですし、また、少し高価でも食べたくなる気持ちがよくわかります。
それほど、とても美味しい1貫でした。
コノシロをギターにすると
コノシロはジャガーというギターが良く似合うと思いました。
ジャガーはショートスケールのギターで、エッジの効いた歯切れの良いサウンドが持ち味です。
少し歪ませてクランチサウンドで弾いたら、コノシロのように味わい深く、どこか癖のある持ち味が活かされるのではないでしょうか!?
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