クサフグは海釣りの代表的な外道魚で、釣り人からは忌み嫌われています。
しかし、よく見ると愛らしい顔つきをしており、膨らんだ姿や胸ビレをパタパタさせて泳ぐ様子は、観察していて飽きないものです。
ここではクサフグはどんな魚なのか、思い出を交えながら書きつつ、ギターにしてみたいと思います。
クサフグはこんな魚
フグ目フグ科のこの魚は、大きくなっても15cm程度の小さなフグです。
体色は黒みがかった草色をしており、キュートな水玉模様が目を引きます。
また、腹側は白く、小さなトゲのような突起が無数についています。
フグ類は毒があるものの、身がとても上品なことから、調理師免許のある料理屋で高値で振舞われています。
しかし、クサフグは小さなフグであることもあって、ほとんど流通していません。
貪欲な性格で、餌のにおいを嗅ぎつけると一気に群がり、餌をついばむようにしてすぐに食べ尽くしてしまいます。
また、口には爪切りのような切れ味の鋭い歯があり、針掛かりした際に釣り糸を切ってしまうこともあります。
そのため、浮き釣りなどをしていてクサフグが群がった場合、本命が非常に釣りづらくなります。
さらには、フグ類の中では珍しく汽水域にも生息し、場合によっては淡水域まで入ってくることもある魚のため、行く先々でクサフグの猛攻に遭うと釣りどころではなくなってしまいます。
持ち帰らない上に悪さまでする邪魔な魚として、釣り人からは邪険に扱われることもよくあります。
ただ、見た目はとても愛らしい魚です。
釣り上げると、体を大きく膨らませて「グゥグゥ」と鳴きます。
針を外して水に入れてやると、すぐに元のフグの姿に戻ります。
また、防波堤の縁の水面付近を泳ぐ姿を観察することもできます。
目の前にエサを落とすと、それをついばむようにして食べるのですが、その時にその場に留まり続けられるように、必死で胸ビレを動かしています。
これは「ホバリング」と呼ばれる、フグ類特有の泳ぎ方ですが、けなげに頑張っている様子がかわいらしくもあります。
嫌われ者の魚ですが、見方を変えるだけでこのようにたくさんの発見があります。
クサフグの思い出
その当時、家族でよく行った岩手の海では釣れない魚でした。
小学生の頃、夏休みの家族旅行で秋田の男鹿に行ったことがありました。
磯釣りができるかも!と意気込んでいったものの、波の荒い磯は想像よりずっと怖ろしく、結局は穏やかな防波堤で釣りをしました。
胴付き仕掛けにオキアミをつけて、すぐにかかったのがクサフグでした。
それはとても小さく、5cmほどの大きさでした。
その小さなフグがピンポン玉のように体を大きく膨らませ、釣りあげられたことに怒っている様子はとても愛らしく、小学生の私にとっては宝物のように尊く思えたのでした。
この時に感じたプラスのイメージが、その後の釣りでもずっと続いています。
宮城の海ではクサフグは簡単に釣れる魚です。
サヨリやウミタナゴ、メバルなんかを狙いに行った際に、クサフグの群れの猛攻に遭って撃沈したことが何度もあります。
クサフグは本当に邪魔です。
でも、なぜだかその日の釣行で1匹目に釣れたクサフグは、邪魔だとわかっているのにも関わらず、かわいらしい存在でしかないのです。
クサフグが宝物のように見えてしまった、小学生の頃のあの魔法にずっとかかりっぱなしのまま、大人になってからも釣りを続けているのかもしれません。
だから、防波堤の上で干からびたクサフグの姿を見つけると、とてもやるせない気持ちになります。
生き物は人間の都合がいいように生まれてきたわけではありません。
むしろ、私たちが自然にお邪魔して、遊ばせていただいているものだと私は思っています。
こちらのエゴで、生き物の命を愚弄する行為は、本当なら許されないものではないでしょうか。
外道の魚が釣れた場合、その魚を食べないのであれば、なるべく弱らせないように逃がしてやって欲しいというのが、私の本音です。
特に、フグ類は皆、見た目にとても愛嬌のある魚です。
一度、童心に帰ったつもりで触れてみると、クサフグの面白いところやかわいらしいところがたくさん見つかるはずです。
クサフグをギターにすると
クサフグはジャガータイプにしてみました。
特徴的なつぶれ方をするジャガーの歪みサウンドは、小さくても強い毒があり、釣られたときに激しく主張するクサフグのイメージにぴったりです。
体表にある水玉模様は、ギターにしてみるととてもかわいらしいアクセントになっています。
かつて、釣りからエレキギターにフィールドを移した際に、ここまで見え方が変わった魚がいたでしょうか!?
サウンドはエフェクターで大きく歪ませて、シューゲイザーの楽曲なんかを演奏したら、かわいくも毒がある唯一無二の表現ができるのではないでしょうか!?
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