その名のとおり、波の間を滑空するように飛ぶ魚として有名なトビウオ。
翼のような大きな胸ビレや、極限まで減らした内臓と体脂肪は、まさに飛ぶことに特化した進化と言えるでしょう。
ここではトビウオはどんな魚なのか、思い出を交えながら書きつつ、ギターにしてみたいと思います。
トビウオはこんな魚

ダツ目トビウオ科のこの魚は、空中を飛ぶ魚として有名です。
単に跳ね飛ぶのではなく、大きな胸ビレを使って風を捕らえ、滑空するようにして飛ぶことができます。
その距離は、長い時で200mを超えるとも言われております。
飛ぶことに特化して進化したたその体には、大きな翼のような胸ビレが備わっています。
また、飛距離を出すためには体をできるだけ軽くする必要があることから、内臓はごくわずかであり、体脂肪も極限まで減らされております。
そのため、食材としてのトビウオは、高たんぱくで低カロリーというダイエットの味方でもあるのです。
滴るような脂の美味しさこそ感じられないものの、刺身やなめろうにすると、モチモチとした弾力を楽しむことができます。
また、軽く干してから焼くのも美味しい食べ方の1つです。
良く引き締まったその身は旨味が強く、噛みしめる度に穏やかな青魚の風味が口の中に広がります。
大根おろしを添えると、より食べやすいでしょう。
トビウオは生物としての認知が高い反面、食材としての認知は今一つのように感じます。
しかし、知らず知らずのうちに食べていることがある魚でもあります。
それは「あごだし」と「とびっこ」です。
あごだしは、乾燥させたトビウオから取られた出汁のことを指します。
脂が少ないトビウオの身は雑味が少なく、すっきりとした旨味が特徴的です。
そのまま和風の料理に使われるだけでなく、ラーメンの出汁としても人気があります。
とびっこは説明不要かもしれませんね。
いくらのミニチュア版のような小さな魚卵で、プチプチとした食感が楽しめます。
ちらし寿司や海苔巻きに使われていることが多いですが、意外と何の卵なのか知られていなかったりもします。
トビウオの卵だという意識が芽生えるだけで、なんだか愛着が湧いてくるものですよ。
トビウオの思い出
今となっては信じがたいことなのですが、私は幼い頃、生の魚介類を食べることができませんでした。
そうなると、お寿司で食べられるものはごく一部に限られてきます。
当時は甘い玉子焼きもあまり好きではなかったため、食べられるお寿司はかっぱ巻きと魚卵の軍艦くらいのものでした。
そのため、トビウオの卵である「とびっこ」の存在には救われました。
プチプチとした食感が楽しく、何貫食べても食べ飽きません。
そして、月日の経過とともに、とびっこ以外のお寿司にも挑戦したい気持ちが芽生えるようになりました。
初めはビンチョウマグロや白身の魚といった癖の少ないものからの挑戦でしたが、意外にも生の魚の味は悪くありませんでした。
単純に、魚を生で食べるという行為にうっすらとした嫌悪感を持っていただけだったのかもしれません。
こうして食わず嫌いが解消されていったのですが、とびっこの軍艦や海苔巻きが、私にとってのお寿司への扉を開いてくれたと言っても過言ではありません。
トビウオという魚は、夏が良く似合います。
実際に旬を迎えるのも夏ですし、波の間を華麗に滑空する様子は、エネルギッシュさと涼やかさとを兼ね備えているようにも思います。
高校生の頃、岩手の沿岸を旅行したことがあります。
電車での移動中、私は車内でヘミングウェイの「老人と海」の文庫を読んでおりました。
その中で、主人公である年老いた漁師が、釣り上げたシイラを船内でさばいて食べようとする描写が印象に残っています。
それは、釣り上げたシイラの腹を裂いた際に、まだ新鮮なままの2匹のトビウオが出てきたため、それも食べることにするという場面でした。
話の本筋にはあまり影響しない部分なのですが、主人公の老人が船上で1人で大魚と格闘するという物語全体に、大きな臨場感と説得力を与えている描写です。
その旅行は夏休みに敢行したものでした。
私がトビウオを、夏の上位の風物詩として捉えているのは、この旅行中の読書がきっかけなのかもしれません。
トビウオをギターにすると

トビウオはフライングVタイプにしてみました。
トビウオをエレキギターにするにあたっては、少々悩みました。
サウンドとしてはクリアな方が良くて、どちらかといえばシングルコイルで...などと最初は考えておりました。
しかし、せっかく飛ぶ魚を取り扱う訳ですから、「『フライング』V」をスルーしてはいけないでしょう!
爽やかに、そして最高にかっこよく演奏するに尽きるのではないでしょうか!?
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