カジカは清流の川底に潜む、愛嬌たっぷりの小さな魚です。
淡水魚の中では泳ぎが遅く、川遊びの相手に最適な魚なのですが、生息域の川底の変化や水質の悪化により、近年は数が激減しています。
ここではカジカはどんな魚なのか、思い出を交えながら書きつつ、ギターにしてみたいと思います。
カジカはこんな魚
初めに、カジカと呼ばれる魚には、一生を河川で過ごす「大卵型」と、一度海へと下る「中卵型」の2種類がいます。
私にとってなじみ深いのは「大卵型」の方なので、本ページでは「大卵型」のことについて記載することにします。
スズキ目カジカ科に属するこの魚は、大きくなっても15cm程度の小さな魚です。
日本には数多くのカジカの仲間が生息していますが、その多くは海水魚。
本種は淡水域で暮らす数少ないカジカの1つで、清流を代表する魚でもあります。
清流で暮らす魚の多くは体をしなやかに動かして泳ぎますが、カジカはあまり泳ぎが得意ではありません。
そのため、川底でじっとしているか、岩のくぼみなどに身を潜めながら、水生昆虫の幼生を食べて生活します。
褐色の体色をしているので、川底の石の色に同化しやすいのです。
小さな魚ながら意外にも脂が乗っており、味の良い淡水魚として主に山間部にて利用されてきました。
しかし、近年では数が激減しています。
カジカはきれいな水でしか生活することができないため、川底の変化や水質の悪化に敏感なのです。
淡水魚の中では動きが遅く、そして愛嬌たっぷりの見た目なので、川遊びの相手としては最適の魚。
夏の遊びの一つとして、「カジカ取り」の風景が長く残って欲しいと思っております。
カジカの思い出
今でこそ釣りは海でしかやらなくなりましたが、小学生の頃は川釣りをすることの方が多かったです。
通っていた小学校の前にも、自宅の近所にもきれいな川が流れていたため、釣りをはじめとした川遊びに接する機会は潤沢にありました。
私の父は、私にとって川遊びの師匠でもありました。
私は3歳から幼稚園に通っていたのですが、その当時の記憶は断片的で覚えていないことが大半です。
しかし、鮮烈な体験だけは、しっかりと頭の中に残り続けています。
その日、父は私を連れて河原まで散歩に行きました。
その川は中津川という川で、盛岡の市街地を流れる清流として知られています。
父は私を浅く緩やかな流れの川岸まで連れていくと、その場にしゃがみこんで川べりの石をゆっくりと、1つずつどかし始めました。
すると。
父がどかした石の下から、茶色っぽい小さな魚が姿を現しました。
隠れ家の石を父に動かされたことに気がついていないのか、その魚はじっとその場に張り付いたまま動きません。
次の瞬間。
父はさっと両手を伸ばすと、その魚を掌ですくいあげたのでした。
その魚は何が起こったのかわからないといった様子で、父の掌の上でじっとしたままです。
このとき、父が私の中でヒーローになったのは、言うまでもありません。
その魚がカジカという名前であることを、帰り道に父が教えてくれました。
カジカ。良い響きです。
それは、カジカが私にとって特別な魚になった瞬間でもありました。
それから数年がたち、私が小学校に上がった頃、父が自分が子どもの頃に川でカジカをたくさん捕まえた話をしてくれたことがありました。
昔は川がもっときれいで、石を数個動かすとすぐにカジカの姿を拝むことができたため、それを手づかみしたり、ヤスで突いたりして捕まえるのが、当時の夏の風物詩でもあったようです。
小学生になり、親の同伴なく川遊びをするようになってから、私は当然のようにカジカ取りに熱中することになります。
当時の中津川は、夏になると比較的浅いエリアが遊泳用に子どもたちに開放されるようになっておりました。
監視員の大人が見守っているので、皆安心して川遊びに熱中します。
ほとんどの子どもたちが泳いだり、少し水深のあるところへ飛び込んだりして遊ぶ中、私は川べりで網を持ち、石をひとつずつどかし続けていました。
カジカの姿を見つけると、すぐに右手で網を川下にかまえて、川の流れに合わせるようにしながら左手でカジカを網の方へ追いやります。
何度か思考錯誤したうえで、たどり着いた手法でした。
こうして、カジカを捕りは夏の恒例行事として楽しんでおりましたが、自分で捕まえたカジカを料理したことは一度もありません。
カジカは私にとっては遊び相手であり、食材として見ることはありませんでした。
ただし、河原のイベントで何度か売られているものを購入したことがあります。
淡白な中に脂があり、小さい魚ながら珍重されてきたのがよくわかる味わいです。
近年、川の開発や水質の悪化などにより、カジカの数は激減していると聞きます。
私が川遊びしていたのはもう25年も昔のことですから、今の子どもたちがカジカ取りを楽しんでいるかどうかはわかりません。
ただ、細々とでも良いので、カジカ取りは夏のささやかな涼の風景として、これからも残って欲しいと思っております。
カジカをギターにすると
カジカはムスタングタイプにしてみました。
ムスタングはショートスケールのギターで、まずは見た目のかわいらしさが、川底で愛嬌を振りまくカジカの姿を連想させます。
また、あまり歪ませすぎないで弾いた時の爽やかな響きは、カジカ取りをした夏の風景の、ささやかな涼やかさを彷彿とさせます。
涼しげに、そして味わい深い音を響かせるのが良いのではないでしょうか!?
コメント