ホウボウを少し地味にしたような見た目のカナガシラは、ホウボウと同様、海底を歩く魚として知られています。
ホウボウと比べると価格が安く、主に産地で消費される傾向にある魚ですが、実際は安くとも非常に味が良い魚です。
ここではカナガシラはどんな魚なのか、思い出を交えながら書きつつ、ギターにしてみたいと思います。
カナガシラはこんな魚
スズキ目ホウボウ科のこの魚は、同じ科に属するホウボウに非常によく似ています。
浮き袋を収縮させて鳴く点や、胸ビレが変化した脚状の器官を使って海底を歩く点など、その生態もホウボウと近い部分が多い魚です。
しかし、ホウボウと比べると派手さは少なく、全体的に赤みが強い体色をしています。
全長は大きくても35cm前後と、ホウボウと比べるとやや小型です。
また、ホウボウの鱗が取りやすいのに対して、カナガシラの鱗は細かくてびっしりとついています。
このように、何かにつけてホウボウと比べられがちなカナガシラは、比較的安価な魚として知られています。
ホウボウが高級魚として都市部に出荷されるのに対し、カナガシラは産地で消費されることが多いように感じます。
しかし、味はホウボウと同様に美味で、市場価格以上に美味しい魚と言えます。
価格が安いのは味が悪いからではなく、どちらかといえば小型で、調理の際の手間が多い魚だからという理由も大きいでしょう。
頭の骨は堅くて包丁が入らず、鱗は細かくて取りにくい。
あまり大きくならず、その上3枚下ろしにした場合には廃棄する部位が多く、歩留まりも悪い。
こういった魚は、調理して食卓に並ぶまでの手間の多さにより、敬遠されて値が付かない傾向にあります。
しかし、その身はきれいな白身であまり癖がなく、調理方法を選びません。
焼く煮る揚げるという調理も良いですが、個人的には汁を使った調理が一番合っているように思います。
頭などのアラからも良い出汁が出ますので、鍋物にしたり、洋風の味付けでブイヤベースにするのも良いでしょう。
店頭で見かけることがあれば、ぜひ一度口にしていただきたい魚の1つです。
カナガシラの思い出
この魚との出会いは、かれこれ15年以上前のことになります。
当時、仙台の大学に通っていた私には、月に数回、自転車に乗って仙台駅前の朝市に向かう習慣がありました。
仙台朝市では、生鮮品が安価で買えることが多く、学生にとっては強い味方だったのです。
不揃いの大きさのサンマが10匹300円、中型のイワシが8匹250円といった激安の価格設定であることが何度もありました。
元々魚が大好きだったため、こんなにも安く手に入れられる可能性があることに胸を躍らせながら、朝市の魚屋さんを覗くという習慣が徐々に確立していきました。
そんな中で出会ったのが、このカナガシラでした。
私の地元の盛岡ではまず見られない魚であり、真っ赤な色合いは遠くからでも目を引きました。
そして、驚くのはその価格です。
20cmほどの個体が7匹で200円くらいで売られています。
見慣れない魚が安価で売られているのですから、興味本位であったとしても損をすることはありません。
迷わずに購入しました。
初めて食べてみた時にまず感じたのは、驚くほど濃厚な出汁の味わいです。
当時は魚焼きグリル付きのガス台が家になかったこともあり、魚の調理は煮魚が中心となっていました。
その時はマース煮のような形で調理していたのですが、カナガシラから出た出汁は金色に輝いており、脂やゼラチンのおかげもあって、口にまとわりつくような濃い味わいです。
これはと思い、食べ終えた汁にしょうゆを入れ、そこに袋ラーメンを入れて煮立て、最後にネギとコショウを入れて、カナガシラ出汁のインスタントラーメンにしてみました。
付属のスープの素は使っていないのにも関わらず、コショウを入れただけで一気に雰囲気が変わり、しっかりと個性のある美味しいラーメンに仕上がりました。
思わぬところで美味しいものが手に入ったという体験は、その後の人生において長く尾を引くことになります。
カナガシラが安くて美味しい魚だというのを身をもって知った私は、それから今日に至るまで、定期的に朝市でカナガシラを購入しています。
カナガシラの旬は秋から冬にかけての寒い時期と言われていますが、旬を少し外してもあまり味が落ちない魚だと思います。
塩焼きや煮つけで充分美味しいですし、3枚におろした身で天ぷらを作ると非常に食べ応えがあります。
しかし、前述の通り、ここ数年は少し本格的な汁物を作る際にカナガシラを購入することが多いです。
寒い時期に美味しい魚なので、タラなどと一緒に寄せ鍋に使うと良いでしょう。
ブイヤベースのレシピは完全には理解していないのですが、なんちゃってブイヤベースを作る際に、ムール貝とセロリ、そしてこのカナガシラは絶対に入れるようにしています。
この3つは旨味の塊のようなものなので、入れておけばまず失敗しません。
最初に購入した15年前と比べると、カナガシラは少しだけ値が付くようになったかもしれません。
しかし、比較的安価な魚であることは、依然として変わっていません。
値があまり付かない魚の美味しさを知った際には、その味を他の人に教えたくなることが多いのですが、このカナガシラに対しては、私は「どうかもう少しの間、この美味しさが世間にばれませんように」という、独占欲に似た気持ちを確実に持ってしまっています。
それでも、値が全くつかなくなれば市場にも出回らなくなると思いますので、「カナガシラは美味い!」ということを、あえて声高に宣言しておきたいと思います。
仙台朝市では「キント」または「金頭」などと書かれて売られていることもありますので、お見かけの際はぜひ一度手に取っていただければ幸いです。
カナガシラをギターにすると
カナガシラはSGタイプにしてみした。
SGには2基のハムバッカーが搭載されており、中音域が太くて艶やかなサウンドはロックとの相性が抜群です。
また、SGはレスポールと比べられることがよくありますが、ボディが軽量化されていることや、ハイフレットが押さえやすいように設計されているといった違いがあります。
私は以前の記事でホウボウをレスポールタイプにしていますが、レスポールより軽量で、それでいて使いやすいように設計されたSGは、派手なホウボウと比べられながらも、やや控えめながらもはっきりとした個性を主張しているカナガシラのイメージにぴったりと重なります。
見た目にも鮮やかなギターですので、首から提げてステージに躍り出れば、カナガシラのように確実にポイントを捉えたいぶし銀の演奏ができるのではないでしょうか!?
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