サケ・マス類は日本人の食生活に密接に結びついており、本種はその代表格となります。
サケは川で生まれたのちに海へと下りますが、成魚となってから生まれた川に戻って産卵する「母川回帰」という習性があるのが特徴です。
ここではサケはどんな魚なのか、思い出を交えながら書きつつ、ギターにしてみたいと思います。
サケはこんな魚
サケ目サケ科を代表するこの魚は、80cm前後まで成長します。
日本に生息するサケ・マス類の中で、本種はその代表格とも呼べる存在。
標準和名は「サケ」ですが、他のサケ・マス類と混同しやすいことから「シロザケ」の名で呼ばれることも多い魚です。
大きな特徴としては、「母川回帰」をするという点が挙げられます。
サケは川で生まれ、幼魚のうちに川を下って海へ向かう魚です。
海に向かったサケは、冷たい海域を回遊しながら2~4年ほどかけて成長すると、今度は生まれた地を目指して川を遡上します。
なぜこのようなことができるのか。その鍵は、サケが持つ優れた嗅覚にあります。
サケは幼魚期に生まれた川の匂いを記憶すると言われており、その匂いの記憶を頼りに、生まれて数年後に再び生まれた川を目指します。
河川は海へとつながっているものの、海で暮らしている状態で川の匂いを感じるというのは、並大抵のことではないように思われます。
しかし、サケは川から100kmも離れた沖合から、川の匂いを感じ取ることができると言われています。
また、大きな川になるほど支流も多く存在しますが、サケはその優れた嗅覚を使って、生まれ育った支流の匂いを嗅ぎ分けることができるのです。
日本人の食生活において、サケ・マス類は非常に重要な種となっていますが、本種はその中でも特に密接。
日本人とサケとの歴史は古く、新巻鮭や石狩鍋、ちゃんちゃん焼き、しもつかれ、氷頭なますのように、各地に特産品が生まれています。
私が住む宮城では、秋に獲れるサケの身と卵であるイクラを使った「はらこ飯」が名物となっています。
単にサケの身とイクラがご飯の上に乗っているのではなく、サケを煮た煮汁で炊飯した炊き込みご飯の上に盛り付けられているのが特徴です。
秋の味覚として親しまれており、専門店はもちろんスーパーでも購入することが可能です。
はらこ飯は自宅で作ることも可能ですが、イクラはなかなか値が張るもの。
そのため、いくらは使わず、写真のようにサケの炊き込みご飯にしてももちろん美味しくいただくことができます。
簡単で美味しいので、食べすぎに注意です!
サケの思い出
私は幼少時代を盛岡で過ごしました。
盛岡には数多くの清流が流れており、その多くは岩手県中央部を南北に流れる北上川にそそいでいます。
北上川は大きな川で、岩手県から宮城県へと流れ、最後は石巻市に到達して海へとつながります。
岩手県は秋鮭の水揚げが本州一で、秋鮭は岩手県のプライドフィッシュでもあります。
そのため、資源の保護の観点から、県内各地で稚魚の放流事業が行われております。
春になると、10cmに満たないくらいの大きさの稚魚を放流するのですが、私が通っていた小学校では、毎年のその時期に授業の一環で稚魚の放流を体験する時間がありました。
普段は絵筆を洗うために使っている小さなバケツを持って、河川敷に向かい、1人当たり5~6匹ほどのサケの稚魚をそれに入れてもらいます。
放流の際は川べりにしゃがみ、水面にバケツをなるべく近づけてから、「大きくなって帰ってきてね」と声をかけて稚魚を送り出します。
こうして、自分の手で放流したという体験が記憶に刻み込まれることにより、サケという魚がより身近なものになるのです。
この放流は水産資源確保のためのものだということは、子供ながらになんとなく理解しています。
サケを使った料理の美味しさも知っています。
それでも、秋になって川に大きなサケの姿を見つけると、自分があの時放流した稚魚なのかもしれないと思い、胸が熱くなります。
「よく帰ってきたね!」とねぎらい、「がんばれ!がんばれ!」と心の中で応援しています。
この光景は、何も子供に限ったことではないかもしれません。
秋に盛岡を散歩すると、河川敷や橋の上から川を見下ろし、戻ってきたサケの雄姿を観察する大人の姿をよく目にします。
皆、子供の頃の体験が、ずっと頭の中に残り続けているのかもしれませんね。
川に戻ってきたサケは、「ぶな」と呼ばれる婚姻色が出ていて、海にいる頃の銀色の魚体と比べて迫力のある見た目になります。
そして、どれだけの距離を流れに逆らって泳いできたのでしょう。
体は傷だらけで、ヒレはもうボロボロ。
長旅の過酷さが体に刻み込まれています。
それでも、最後の力を振り絞って生まれた川の川底に産卵すると、ほどなくして生涯を終えます。
なきがらは他の生物の食料となり、孵化した稚魚が翌年の春に再び海を目指して旅立つ。
命の循環の不思議、そして尊さの光景を目の当たりにする場面でもあります。
サケの放流は、盛岡の子供たちにとってはあまりに当たり前の体験でした。
それが「命について考える授業」だったことに気づいたのは、大人になってからのことでした。
釣りや植物採集を行う際に、不要な殺生はしてはいけない、命をいただくときは大切に食べるようにしたいといった考えが、幼少期から私の中に根づいているように思います。
この考え方は、サケから教わったものなのかもしれません。
サケは私にとっての恩師でもありました。ありがたいことですね。
サケをギターにすると
サケはストラトキャスタータイプにしてみました。
我々の生活に密接に関わり、広く愛されている姿は、音作りが多彩で演奏する音楽のジャンルを選ばないストラトキャスターのイメージがしっくりきます。
また、色合いはあえて「ぶな」が出たものにしてみました。
サケは食料資源として非常に重要な種で、私も大好物なのですが、せっかくギターにするのであれば、銀色の魚体ではなく、命を燃やしている最中の姿を描きたいと思いました。
生まれた川に帰ってきたサケの雄姿こそが、私がギターに残したい色でもありました。
(また、わかりにくいですが、ボリュームとトーンのノブはイクラの赤色にしています。)
このギターをステージで弾く時は、とにかく安心して臨むことが大事だと思います。
このギターを選んだ時点でもう大丈夫!
ステージに立つ前に、並々ならぬ練習と努力を重ねてきたはず。
それは、どれだけ緊張する場面においても揺らがない自信、事実でもあるはずです。
ステージで緊張を感じている時に、自分が努力してきた道筋を思い出せば、生まれた川に戻ってきたサケのように迷いのない堂々とした演奏ができます! 絶対にできます!
コメント